中国インターネット利用状況、2017年の統計結果! スマートテレビの普及と広がる「SNSの生態圏」、目的に合わせたプラットフォーム選定と動画で市場を制する
中国インターネット情報センター(中国互联网络信息中心、China Internet Network Information Center、略称CNNIC)は中国におけるインターネットサービスの提供機関で、約半年に一度「中国互联网络发展状况统计报告(中国インターネット発展状況統計報告)」のレポートを発表しています。このレポートは中国政府の年度統計レポートに利用されているだけでなく、国連やその他国際機構でも参考とされる権威あるデータとなっています。
本編ではまず、2018年3月に発表された「第41回中国インターネット発展状況統計報告」より中国のインターネットユーザーの最新動向を紹介します。その後インターネット利用者の多くが利用するSNSについて、その種類の多さとそれぞれの特性を踏まえたインターネット上でのプロモーションについて考察します。
■中国インターネット2017年の統計結果! ネットユーザー約7.72億人、うち97.5%がスマホユーザー
2017年12月までの中国のインターネットユーザーは7.72億人、普及率は55.8%となりました。
2017年8月の第40回のレポートでは2017年6月までの数字が報告され、インターネットユーザーは7.51億人、この時点で全世界のネットユーザーの5分の1を占める規模になっていました。同じく普及率は54.3%であり、短期間に普及が爆発的に進んでいるというわけではありません。また農村のインターネットユーザーは2.09億人(2016年末との比較で793万人増加)、中国のインターネットユーザー全体の27.0%を占めています。
1週間のインターネットの利用時間は27.0時間となりました。1日平均約4時間であり、平日休日問わず生活のさまざまなシーンでスマホを手に取る姿が想像できます。
・EC利用者はネットユーザーの69.1%にあたる5.33億人に拡大、うち5.06億人がモバイルからアクセス
インターネットを通じて買い物を行うユーザーは5.33億人(2016年比較で14.3%増)、ユーザー全体の69.1%を占めます。モバイルでのEC利用者は5.06億人となっています。
現在中国の市場については、その消費力の大きさや可能性について多く報道がなされています。ですが、このレポートからは、インターネットの普及はまだ半分を超えたところだということがわかります。インターネットを通じて消費行動を起こせる中国人消費者が、実はまだ中国の市場の半分でしかないのです。
そんな中でも、ECプラットフォームのセールでは、昨年のダブルイレブンでも今年の618でも、過去最高の販売額を更新しています。今後のインターネット利用者、ECユーザーの拡大に伴い、消費の規模も一層増大していくことが予想されます。ちなみに、総務省のデータによれば、日本の2016年のインターネット利用人口は約1億85万人、普及率は83.5%です。
・モバイルの比率はさらに拡大、テレビでのインターネットアクセスは微増しPCは低下
当ブログをお読みいただいている方であれば「中国のインターネットといえばモバイル」という常識をすでにお持ちかもしれません。今回のレポートではモバイルでのインターネットユーザーは全体の97.5%となったことが述べられており、前回の95.1%からさらに増加しました。
テレビでのインターネット利用も28.2%とその比率をアップさせています(3.2ポイント増)。一方でパソコンでのインターネット利用比率は低下しています。
中国ではインターネットに接続できるスマートテレビの普及が進んでおり、2018年にはその販売量は5000万台を突破するという調査機関の予測も出ています。別の調査では、ユーザーがスマートテレビを利用する目的は、動画配信サービスが最も大きく、次にゲームとなっています。
デバイス別に動画視聴するユーザーの割合を調査したところ、スマートテレビでの動画視聴サービス利用者は89.0%と最も多くなっています。スマートテレビ以外のデバイスで動画を視聴するユーザーの割合は、PC67.7%、スマホ57.6%、タブレット68.6%となっています。動画配信サービスの人気とインターネットテレビの普及は相互に影響しているようです。
またユーザーの61.2%がほぼ毎日スマートテレビを利用しています。平日と休日では休日の視聴時間の方が長く、1日の中では19時以降がもっとも使用するユーザーが多くなっており、プライベートなシーン、くつろぐ時間に利用されていることがうかがえます。
■最も使われるインターネットサービスは「チャット」 起床から就寝まで、目的に応じSNSを使い分け
ユーザーのインターネットで利用するサービス別では、使用率が高いものはチャット(93.3%)、検索エンジン(82.8%)、ニュース(83.8%)、ビデオの視聴(75.0%)などです。またライブ動画は54.7%、Weiboは40.9%となっています(2016年の37.1%から数ポイント増)。またスマホでの利用に限った場合もその利用率には大きな変化はありません。
▼Weiboについてまとめています(クロスシー公式ブログ)
Weibo(微博/ウェイボー)とは? 最新情報・基本情報・公式アカウントの活用方法すべて教えます!
こういったさまざまな形態のサービスが高い普及率を保持していることからは、たとえば以下のように、時間帯ごとに目的に応じ複数のSNSやアプリに接触するネットユーザーの姿が考えられます。
朝起床し、すぐにWeChatをチェック。友人や家族からの連絡、公式アカウントが届けるニュースをチェックしたり、あるいはタイムラインをひらいて友人が昨晩訪れたお薦めのレストランを知るかもしれません。
出勤時は音楽を聴いたり、動画を観たり、さまざまなサイトからニュースを集めて紹介する「今日头条(Toutiao)」をひらいたりします。会社での勤務中には、単純作業の際には音楽を聴き、仕事にも関連するような分野の気になることや自分自身の知的好奇心を満たすために「知乎(ジーフ―)」(※)を調べるなどします。
※文字ベースの知識共有サイト
昼休みにはWeiboをひらき、気になる俳優の情報や、今の季節に合った化粧品の評判を調べます。午後の勤務中もやはり音楽を聴いたり調べごとをしたりするかもしれません。知乎(ジーフ―)だけでなく、「百度贴吧(Tieba)」というテーマ別に掲示板を立ち上げられるサービスをチェックすることもあります。
帰路はまた音楽、動画、ニュース、Weiboなどをスマホアプリで楽しみます。夕食後は「ライブ動画」「ショートムービー」「豆瓣(ドウバン)」といった娯楽や趣味の要素が強いサービスを利用する場合が多いでしょう。
寝る前にも音楽を聴いたりSNSをチェックしたりするでしょう。また、一日を通してチャットツールのWeChatを通じ、友人や同僚とコミュニケーションをしています。昼食をとるレストランや、ショッピングモールでの夕食の購入にはWeChatの支払い機能を利用しているかもしれません。
▼WeChatについてまとめています(クロスシー公式ブログ)
WeChat/Weixin微信は中国の必携アプリ、基本構造&実際の利用シーン&登録方法を解説!
もちろん上のような1日は一例にすぎず、個人の好みに応じて利用するサービスの組み合わせは多少異なってきます。ですが、インターネットユーザー(≒モバイルユーザー)が、情報収集や趣味の時間をスマホを通じて充実させている、という点には大きな違いはありません。上記の表に出てくるいくつかは、多くのインターネットユーザーにとって非常に「基本的」ともいえるツールになっています。
■異なるSNSに異なる関心 「SNSプラットフォーム」の覇者となった小米
それぞれのSNSごとのユーザーの関心領域にはどのような特徴があるのでしょうか? 以下は、ユーザーの関心の大きさと文字の大きさを比例させ、SNSごとのユーザーの関心領域を示したものです。データは2017年のもので、知乎(ジーフー)は公式サイトのデータ、その他はWeiboキーワードを用いた調査結果となっています。
たとえば『知乎(ジーフー)』であれば「インターネット」「映画」「旅行」「科学技術」「自然科学」「経済学」「起業」「グルメ」といった単語が目立ちます。一方でショートムービーのSNSである『秒拍(ミャオパイ)』では「漫画」「起業」「簡単」「子供」「ストーリー」といった文字が目立ちます。又その他のSNSでも似たり寄ったりの文字があふれるということはなく、ユーザーの関心領域について、SNSごとにかなり異なる傾向のあることが見て取れます。
▲文字ベースの知識共有サ―ビス知乎(ジーフ―)のトップページ
こういった各SNSプラットフォームの特徴をおさえ、特定のプラットフォームのファン獲得過程における「役割」を意識し、マーケティングに成功したのが小米(シャオミ)です。たとえば以下のSNSを、それぞれの目的に合わせて利用しています。
- 掲示板…百度贴吧(Tieba)など 小米のファン同士のコミュニケーションの場として活用。500万人のファンが小米を共通軸にコミュニティを形成し、小米製品を使って参加できるキャンペーンを楽しんでいる。
- 動画配信サービス…YOUKU、bilibili、秒拍(ミャオパイ)など 製品発表会の様子、アニメとのコラボ、7周年記念ファン感謝動画などプラットフォームに合ったテイストの動画を配信。小米のイメージを広めるコンテンツの拡充を実現している。
- 小規模だが明確なターゲットのいるプラットフォーム:知乎、网易云音乐(NETEASE クラウドミュージック) シャオミの製品との親和性の高い層がいると仮定し、CEOの雷軍(レイ・ジュン)自らがファンとのコミュニケーションチャネルとして活用した。ブランドにうんちくを求めたり、徹底的な理解を求める層に対し、CEO自らの言葉で説明を行った。結果、小米が専門的に見ても優れた企業であり製品であるというブランドイメージを確立させ、SNSを通じてユーザーにファンとなってもらうことに成功した。
- 今日头条(Toutiao)、QQ空间 一級都市や二級都市と呼ばれる経済規模の大きな都市のみならず、三級都市や四級都市といった経済水準が相対的に低い都市の消費者層へのリーチを狙う。三級都市、四級都市における小米製品の認知拡大に成功した。
▼小米(シャオミ)についてまとめています(クロスシー公式ブログ)
株式上場で注目あつまるコスパよしの「小米シャオミ」はスマホだけじゃない幅広い商品ラインナップ ~ウェアラブルデバイス、スマート家電、ドローンそして2018年はVRゴーグル~
■まとめ ~ユーザーの限られたオンラインの時間に、アテンションを獲得するカギは「動画」~
小米の成功例からは、中国インターネット上でのプロモーションにおいて最も重要な物が見えてきます。それは「SNSごとのユーザー像」と「そこでの目的(ブランド地位の確立なのか、ユーザーのエンゲージメントの獲得なのか)」を理解し、それぞれに合致するコンテンツの制作と公開です。
見てきたように、インターネットユーザーのオンラインの時間は有限です。また中国でも都市部を筆頭に、あふれる情報と共に過ごす日常では、時間の流れを早く感じる人も多くなっています。昨今ブームとなっている動画コンテンツですが、短時間で受け取れる情報量の多さが生活形態にマッチしているということも、普及の理由一つです。
インターネット上では日々新しい動画コンテンツが生み出され配信されています。正確に、力強く、目的の層にメッセージを届けられる動画の企画と製作が、これからの中国向けマーケティングの明暗を分ける一要素となるでしょう。
▼動画配信サービスのbilibiliとは? 自社媒体とKOLの違いは?(クロスシー公式サイト)
中国の動画配信、今bilibiliに注力すべき理由~動画配信プラットフォーム概観から、消費意欲の高い「Z世代」の特徴まで~
参考:
CNNIC报告下载
【观点】双微运营已死,全社交平台营销才是下一个趋势
腾讯:2018智能电视用户行为大揭秘
総務省白書29年版 インターネットの普及状況