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美団大衆点評 Meituan Dianping “中国ネクストBAT”の1社を解説

ここ数年、中国のITが生活の利便性を大きく向上させています。日本でも多くのメディアで紹介されており、そのサービスの思い切りの良さに驚嘆の声が上がっています。

SNS、EC(ネット通販)、電子決済から、タクシーの手配、生鮮食品の宅配など、IT技術を生活と密着したサービスとして提供することにかけては、中国企業は非常に長けているようです。

中国の老舗IT大手と言えば、「BAT」と呼ばれるBaidu、Alibaba、Tencentですが、インターネットユーザーの需要の変化により、こうした企業も手掛ける事業も多角化しています。例えば、検索エンジンで有名なBaidu(百度/バイドゥ)は、現在自動運転技術の開発・実用化に取り組んでおり、この分野で他社に差をつけています。

▼クロスシー公式ブログ

中国検索エンジン「百度/Baidu」はAI自動運転を開始、アプリで変わる中国ネットユーザーの情報収集方法

インターネットユーザーの拡大と、消費者の需要が多様になっていく中で、BATだけにとどまらない中国のIT企業各社の発展に注目が集まっています。

例えば、その便利さと配達可能な店舗の幅広さで、昨年より大きく注目を集めているのが、中国の「フードデリバリー」のサービスです。複数のIT企業がこのようなサービスを展開しています。

今回は、主要な フードデリバリーサービスのうちの一つMeituan Waimai(美団外売)を展開する Meituan Dianping(美団大衆点評)について解説します。

■ Meituan(美団)は口コミからローカルビジネスへの誘客まで

フードデリバリーでその名を知る人も多い Meituan (美団)は、もともと共同購入型のクーポンサイト運営で知られていました。まずは同社のサービスの開始と、その企業としての成長から順に見てみましょう。

北京に本社を持つMeituan美団/メイトゥアン)により、2010年3月オープンされた共同購入型クーポンサイトが「美団網」(メイトゥアンワン)です。

ユーザーは美団網(メイトゥアンワン) でクーポンの共同購入ができるだけでなく、クーポンが使える店舗の口コミを投稿、閲覧できます。

中国人にとって、口コミは非常に重要な情報源です。日本人が自分の欲しい情報のカテゴリに従って、ブログやInstagram、Twitter、あるいはYouTubeを検索し情報収集するように、中国人はこうした「口コミサイト」から、自分の出かける先や、宿泊先、映画作品の評判をチェックします。

現在は、レストラン、映画館、ホテル、レジャー施設の口コミの投稿・閲覧やチケットの購入にまでサービスが拡張しています。

口コミのチェックだけでなく、そのままレストラン、ホテル、エステ、映画館の座席の予約までをユーザーに提供しており、施設の目線に立てば、ユーザーを実店舗へ誘客する役割も果たしています。

サービスをローンチした2010年には、上海、武漢、西安、広州、無錫、南京、石家庄と順番に対象地域を拡大していきました。

時価総額「1兆6,200億円」。Alibabaの出資を受けるも、最後はテンセント陣営へ

2011年にはAlibabaからの投資も受けています。この後2015年10月にいたるまで、複数回の資金調達に成功しています。

2014年、同社のサービスの取引額は460億元(約7,360億円)を記録し、 前年比180%超の成長となりました。 Meituan (美団)は当時、こうしたローカルビジネスを対象にしたクーポン販売・口コミ投稿サイトの市場シェアの60%を占めたと言われています。

2015年10月には、同様のサービスを展開するDianping(大衆点評)との合併を発表し、組織名は Meituan Dianping (美団大衆点評/メイトゥアンディエンピン)と変更されました。(以下、Meituan Dianpingと表記)

Meituan (美団)のCEO王興とDianping (大衆点評)のCEO張涛は、いずれも共同最高経営責任者としてCEOの地位にとどまっています。

この時点で、企業の時価総額は150億USドル(約1兆6,200億円)になったとも言われています。

翌月11月以降、Alibabaは Meituan Dianping へのこれ以上の出資を行わないことを決定し、これによりMeituan Dianping は Tencent (騰訊/ テンセント )陣営としての色合いを強めていきます。

▲ Tencent (騰訊/ テンセント ) のWeChatで提供されている、「Meituan」関係のミニプログラム

Dianping (大衆点評)との合併、時価総額さらにアップ、香港市場への上場

サービスとしては 美団網大衆点評網も両方継続されており、両者は現在にいたるまで、こうしたクーポンの共同購入・口コミサイトとしては市場トップのゆるぎない地位にあります。

2018年9月、 MeituanDianpingは香港証券取引所に上場します。中国企業としては、 Xiaomi(小米/シャオミ) に続く2番目の上場となりました。

▼ Xiaomi(小米/シャオミ)に ついてはこちらのエントリで解説しています(クロスシー公式ブログ)

株式上場で注目あつまるコスパよしの「小米シャオミ」はスマホだけじゃない幅広い商品ラインナップ ~ウェアラブルデバイス、スマート家電、ドローンそして2018年はVRゴーグル~

ユーザー数は3億人を突破、同種アプリのユーザーは約5億人

上場前の2017年には、ユーザー数が3.1億を突破したことが伝えられています。この年、登録された店舗は440万件に達し、オンラインでは一日当たり2,700万件、オフラインでは一日当たり700万件の、様々な領域のサービスに対する予約が成立していると言います。

また2018年10月に公開されたある調査結果によれば、同社が提供するような、食や娯楽といった生活と密着したサービスを提供するインターネットサービスのユーザーは、2018年には5億人に迫ります。こうした約5億人のユーザーのうち、実に70%がMeituanDianpingを第一の選択肢として考えるという結果が出ています。

■中国で大流行のデリバリー、外売( ワイマイ )!生鮮食品や薬品の配達も

共同購入や口コミサイトとして成長してきた Meituan (美団) ですが、2013年にはもう一つの重要な事業を開始しています。デリバリーサービスです。新たな事業は Meituan Waimai(美団外売/メイトゥアンワイマイ)と名付けられました。

中国では温かい食事に対するこだわりや、便利さを重視する傾向があり、以前から、出前は日常的に展開されているサービスでした。 MeituanWaimai(美団外売) のサービスではスマホアプリを通じて出前したい商品の注文・支払いを可能にし、現在では一つのサービスで網羅的に出前したいものを検索できるようになっています。

▲メニューからWaimai(外売)を選択、カテゴリから配達してほしいものを選ぶ。

▲ 設定した居住地付近の店舗が表示される

スタート当初は、登録店舗や配達員の不足から、現在Alibabaに買収されているライバルサービス「eleme」(餓了么/ウーラマ)の後塵を拝していました。

こうした状況を打破するため、2014年には、およそ1.5日ごとに新たな地域にサービスを展開。スピード感のあるサービス範囲の拡張と、ホワイトカラーだけでなく学生をもターゲットとする施策を実施し、市場シェアを拡大していきます。こうして、2018年には一日の注文が2,000万件を超えるまでに成長しています。

Meituan(美団)は市場シェア64.1%、Alibaba系のeleme(餓了么)33.7%、Baidu Waimaiは数%

「デリバリー」業界における各社シェアを見てみると、 2017年の時点でMeituanのMeituan Waimai(美団外売)、eleme(餓了么)、Baidu(百度)のBiaudu Waimai(百度外売)の3社で市場の90%超に達したといいます。そしてその翌年の2018年4月に、eleme(餓了么) はAlibabaのグループに買収されます。

その後2019年3月に発表されたあるデリバリー市場のシェアに関する レポートによれば、Meituan(美団)64.1%、Alibabaのeleme(餓了么) とその系列サービスを合わせて33.7%であり、Baiduは数%に落ち込んでいるようです。

こうしたデリバリーサービスは、料理だけでなく、タピオカミルクティーなどの飲料、生鮮食品や薬品など、様々な商品を対象に提供されています。

▲ Meituan Waimai(美団外売)のメニュー

▲生鮮食品(左)と薬など(右)

飲食店や小売店にとっても、自社でアプリを開発することなく、 Meituan Waimai(美団外売) のユーザーに商品販売ができるためメリットがあったと言われています。ただし、こうした販売者側が取引に応じてMeituanに納める手数料は年々アップしているとも伝えられており、今後はこうしたコストにも注視が必要でしょう。

■タクシー配車サービス領域に進出、ライバルは滴滴出車(Didi)

2019年4月、 Meituan (美団)はタクシー配車サービスの美団打車をリリースしました。実は美団打車のサービスについては、二年前から構想があったものの、当時南京と上海での試験運用は失敗に終わっていました。

今回は4月末に、前回同様の南京、上海からサービスをスタート。続く5月中旬からは、蘇州、杭州、温州、寧波、天津、重慶、西安、成都、鄭州、武漢、深圳、長沙、合肥、昆明、杭州の計15都市でも提供を開始しています。地図の座標を北京にしても利用可能な車が現れることから、6月にも対象地域が広がっていると考えられます。

現在中国国内でのライドシェア・タクシー配車の市場シェアは Didi(滴滴出行) がトップとなっていますが、同社をライバルにこの分野でシェアを拡大していく狙いと見られています。Didi(滴滴出行)と異なり、Meituan(美団)は自社に所属するドライバーのタクシーだけでなく、以前から配車サービスを提供している首汽約車、曹操出行、神州専車のタクシーを手配できるというメリットもあります。

▲ 美団(Meituan) アプリのメニューから美団打車を起動した画面

■まとめ~OMOの発展も、大切なのは商品とサービス~

デリバリーの領域、また配車サービスでシェア拡大を狙うMeituan(美団)ですが、こうしたビジネスモデルは「OMO」(オンライン・マージド・オフライン)や「O2O」(オンライン・トゥ・オフライン)といった概念で説明されることが多くなってきています。

こうしたオンラインの手軽さとオフラインの商品の魅力を結びつけるプラットフォームは、AlibabaやTencent、Baiduも目指しているところであり、この点からも現在の中国におけるMeituanの存在感がうかがい知れます。

特にデリバリーの領域では60%を超す高いシェアを獲得しています。この優位性を活かして、2年前撤退せざるを得なかった配車サービスに再チャレンジしていると言えるでしょう。

同時に、プラットフォームはあくまでも顧客に商品を届けるためのツールにすぎません。仕組みがいかに優れていようと、実際の商品やサービスに価値がなければ、顧客のニーズは満たせません。今後は中国市場でも、こうした「サービス体験の質」が、定着を左右していくと見られます。

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