MafengwoとQyerを旅マエでチェック! 中国人FIT層の「情報収集」チャネル、Ctripとの違いは旅行記の存在感
訪日中国人外客数の年間のピークは、いつかご存知でしょうか? 実は、春節のある初春でも、国慶節のある10月でもなく「夏」なのです。(2017年の中国からの訪日外客数は7月約78万人、8月約82万人)夏(7~8月)は学校や職場の夏休みがあり家族旅行に適したシーズンであること、中国では6月が卒業の時期であり卒業旅行として日本を訪れる層がいることが、理由として考えられます。
本編では、検索エンジンや中国SNSの代表格Weiboに加え、中国人観光客が旅マエでチェックするウェブサイトやオンラインサービス「Mafengwo」「Qyer」について、中国OTAの代名詞でもあるCtripや昨今存在感を増しているTuniuとの違いに着目しながら紹介します。それぞれのオンラインサービスの特徴や、実際のコンテンツ、またそのプラットフォームを用いた施策について紹介します。
■旅マエの情報収集でブログ型メディアが人気、理由は「オリジナルな体験」のニーズの増大
まずは「旅行」に特化した中国のオンラインサービスについて、事業者マップを見てみましょう。
旅マエの情報収集では主に上図の中央に位置する「購買チャネル」や右側の「情報収集チャネル」が活用されています。特に周囲と差別化を図りたいという思いが強く、まだあまり他人が経験したことのない旅行を求めている個人旅行(FIT)層は、ユーザーが投稿するオリジナルコンテンツ(UGC)が集積しているサービスに価値を見出しています。そのため、数々の旅行記が掲載されている「马蜂窝Mafengwo」や「穷游Qyer」はFIT層の増加に伴い人気を博すようになってきました。
■ブログ型メディアMafengwo/Qyer と、OTA大手のCtripやTuniu(途牛)の違い
ブログ型メディアMafengwoやQyer と、OTA老舗CtripやTuniuとの違いはどこにあるのでしょうか? 以下は順に、Mafengwo、Qyerのトップページです。
MafengwoもQyerも、検索窓の下の一段がおすすめの旅行ツアー、その下に旅行記が並ぶデザインになっています。
一方、CtripやTuniuにも旅先の体験記のカテゴリがありますが、トップページはその大半かすべてがおすすめのツアー旅行や航空券に割かれており、航空券や宿泊先の手配に利用されていること多いと推察されます。
■プロ級の旅行ブロガーがひしめきあうMafengwoの「游記」
続いて、実際に「马蜂窝Mafengwo」に投稿されているユーザーのオリジナルコンテンツ(UGC)を見ていきます。
旅行体験記は中国語で「游記」と呼ばれます。また似た概念に「攻略」というワードがあります。Mafengwoの場合、滞在先での効率の良いまわり方やお薦めのスポットのまとめなど情報整理を主軸においたコンテンツが後者に分類されているようです。Mafengwo、Qyer、Ctrip、Tuniuのどのサイトにもユーザーによる「游記」コンテンツが存在しますが、現在のところMafengwoのみBGMが流れる仕様になっています。
Mafengwoの「游記」の投稿本数の総数は一見してわかりませんが、トップページではそれぞれのコンテンツのPV数や「いいね」の数がわかるようにタイトルが10本ほど表示されています。「おすすめ」のカテゴリに表示されているコンテンツのPV数は1,000~1万弱となっています(2018年5月16日現在)
Mafengwoに限らず、游記として投稿されているコンテンツは写真とテキストで編集されたものが多く、その分量は読了までPCで何度もスクロールが必要なボリュームです。コンテンツは章立てされており、それぞれの文頭に飛べる仕組みですが、この章は10を超えるものが多くなっています。
▲ある体験記の冒頭部分。右カラムに目次がずらりと並んでいる。
参照:http://www.mafengwo.cn/i/8886050.html
写真をふんだんにつかったブログ形式で、非日常的な旅先の雰囲気の印象的な写真が並び、都市の印象がつづられ、おすすめの施設などが紹介されています。同時に、旅先でのお役立ちサイトの紹介や、時刻表の情報、目的地の主要地区の地図、具体的な行程など旅行者の視点で役に立つ情報が提供されています。
「游記」「攻略」どちらのカテゴリの記事にもコメント欄が設けられており、活発に書き込みと回答が行われていることが確認できます。たとえば日本旅行に関してなら「一万円札って使う場面あるの?小さいお金の準備は必要?」といった質問に「一万円札を使うこともあるし、小さい額面はそれはそれで準備しておくと便利ですよ」という回答がついていたり、スーパーで購入した刺身の写真に対して「醤油とわさびはついているの?」といった質問が投げかけられており、ここでの情報をもとに滞在中の過ごし方を検討している様子がうかがえます。
■日本でも地方自治体、インバウンド集客を目指す企業がブロガー招聘に乗り出す
中国の調査機関「易観」によれば、オンラインレジャートラベルの2017年市場では海外旅行が半分以上を占めていました。また2017年の旅行者全体における個人旅行の比率は7割に迫っており、その市場規模は前年の424.1億元から650.1億元へと成長しました。一方で、団体旅行の消費額総計は減少しています。
こういった流れからも、今後より多数の中国人旅行客が個人旅行という形で海外旅行へ出かけることが予測され、その際に旅先の情報を集めるためのMafengwoやQyerといったサービスがますます利用されていくと考えられます。
すでにインバウンド集客を目的に、これらプラットフォームでインフルエンサーとなっているブロガーを招へいしている地方自治体や企業もあります。WeiboやWeChatといった王道のSNSと並行して、中国人旅行客、特にFIT層へ効率的にリーチできるチャネルとしてMafengwoやQyerを利用しない手はないでしょう。