微選【WeXuan】アカウント10億超えのWeChat×中国EC大手の京東がテストとミニプログラム提供を開始
今月登録アカウント数が全世界で10億人を突破したと報じられた、中国ではおなじみのメッセージアプリ「WeChat」。メッセージ機能だけでなく、決済機能やSNSフィードを備えています。タクシーの配車サービス「滴滴出行」や中国版食べログ「大衆点評」といったサードパーティのツールをWeChat内で起動できることから、中国の生活ではなくてはならない存在です。
参考:メッセージアプリ「WeChat」、アカウント数が世界全体で10億突破(AFP)
■WeXuanとは京東の合弁会社によるWeChat内部のECプラットフォーム
さてそんな日常生活の一部である巨大サービス「WeChat」のアプリの内部に、2018年3月1日から新機能が搭載されたそうです。
その名も「微選」(WeXuan)。WeChat内の公式ECプラットフォームとして、WeChat内でのネットショッピングサービスを提供します。このWeXuanは京東集団と美丽联合集团の合弁会社により運営されています。
WeXuanのローンチにより、アプリを立ち上げた後の「発見」のタブに「買い物」メニューが並ぶようになります。
こちらの「買い物」メニューをタップすると、中国ECプラットフォーム二大巨頭の一手、京東商城のトップページがWeChat内に立ち上がるようになっているそうです。
この京東商城のトップページからWeXuanのサービスへ遷移できます。現在は公開テストの段階であり、アプリの中に「買い物」メニューのあるユーザーと、ないユーザーが混在しているようです。
■発見メニューにWeXuanない場合は「ミニプログラム」から
WeChatには、WeChat内部で立ち上げられる「ミニプログラム」と呼ばれるアプリのような機能が存在します。OSの違いに関わらずWeChatのユーザーが簡単に利用できるが特徴です。テンセントは昨年来このミニプログラムの機能制限を取り払っており、ミニプログラムから外部サイトへ直接遷移できるようにするなど、WeChat上でのECによる商機を拡大しつつありました。
▲一度利用したミニプログラムは、会話メニューの画面でスクロールダウンすると即時上部に出現する。
今回の「WeXuan」は上述のようにまだ正式なサービスとしてローンチしていませんが、3月1日に承認が下り、すでにミニプログラムとしてサービス提供を開始しています。ミニプログラムのWeXuanを確認したところ、現在約10万店以上が出店しており、この日の正午までに一日で約1,090店が増えていました。(2018年3月26日確認)
上のキャプチャはミニプログラムのWeXuanですが、先ほどの京東商城のトップページからWeXuanに遷移した場合も同様の画面が表示されます。カテゴリをタップすると、その先に店舗が複数表示されます。店舗を選択すると、店舗ページへ遷移します。WeChatのウォール(朋友圏)にも似たデザインとなっていて、右下のボタンからは店舗と会話ができるようになっています。
3月中旬現在、この画面から購入する方法はないようで、WeChat上で会話をし、購入可能な店舗へ移動する…という形が多数派のようです。
■微店との違いは? 今後の展望は?
これまでにも「微店」というモバイルアプリがWeChatアカウントと連携できるECプラットフォームとして存在していました。個人で出店が可能なことから中国のユーザーからは「アリババのタオバオと同様のサービス」とみなされていましたが、パイがひっくり返るほどの劇的な普及は実現していません。
中国産業研究院の「2017年度网络购物app市场研究报告」の2017年のECのプラットフォーム別の普及率(最終週による)を見ても、タオバオの一強が見て取れます。
しかし同報告書からは、タオバオの一強が崩される可能性もまた見えてくるようです。2017年最終週のECのプラットフォーム別の普及率はモバイルタオバオがトップで53.3%、続く京東が20.6%、そして昨年テンセントの出資した「併多多」が19.4%となっています。
参考:http://news.ifeng.com/a/20180205/55780415_0.shtml
今回WeXuanをローンチするのは京東と、上記表に2.2%で8位にランクインしているMogujieを運営する美丽联合集团(Meili)。アリババは現在BtoCのECプラットフォームであるTmallに注力しており、個人商店が多いタオバオ内ではユーザーの不満もあるそうです。WeXuanに個人ユーザーにとってより便利な機能が搭載されれば、彼らのプラットフォーム移動もあり得るとの見方もあります。
これまでのところ、テンセントが運営するWeChatのアカウント内部からは、中国のEC業界をけん引しているアリババグループのタオバオとTmallには遷移できなくなっています。今回の「WeXuan」は実際のところまだ準備完了とは言い難い状態です。ですが、正式にローンチされれば、10億のアカウント数を誇る「WeChat」が直接リンクされるECプラットフォームとなります。
中国産業研究院の研究結果からは京東の追随も功を奏しつつあるように見えます。アリババの首位がゆらぐのかどうか、要注目の1年となりそうです。