TikTokまとめ! 広がるユーザー層、EC機能の実装で2018年ダブルイレブンでは売上8,000万元(約13億2,000万円)のKOLも
日本でもユーザー層を広げている中国発のショートムービーアプリの「TikTok」。中国版の「Douyin」(抖音)では、日本版とは異なりECへのリンクも開始されました。前半では2018年のユーザー数や追加された機能についてまとめ、後半では新たに実装されたECサービスとの連携について解説します。
※ショートムービーアプリのTikTokは国際版の「TikTok」と、中国国内向けの「Douyin」(抖音)とでプラットフォームが分けられており、それぞれに投稿されたコンテンツはプラットフォームをまたいで閲覧はできない。また実装されている機能にも多少の違いがある。
■TikTok最新のユーザーデータ~男性&地方都市の比率が上昇~
まずは最新のTikTokのユーザー数等のデータを確認してみましょう。10月に中国のビッグデータ分析大手のMiaozhenと海馬雲ビッグデータは、共同で「2018TikTokレポート」を発表しています。
これによれば2018年10月時点のTikTokの全世界ユーザー数は5億超、DAU(デイリーアクティブユーザー)は1.5億、MAU(マンスリーアクティブユーザー)は3億です。現在中国で最も人気のショートムービープラットフォームであることがわかります。
レポートではTikTokとそのライバルである「快手」の他、中国の主要なショートムービーサービスである「美拍」「火山」「秒拍」について、ユーザー数と話題性による指標を比較しています。
▲ネットでの話題性とユーザー数を総合した指数グラフ。赤線がTikTok、黒の破線が快手。両者は17年末に順位が入れ替わっている。
この指標は2018年の上半期までの数字がグラフとなっています。2014年から定番アプリとなり2015年にはユーザー1億を突破したという「美拍」やWeiboが投資する「秒拍」はやや下降しながら回復気味となっています。また他の4者に比べ、2018年上半期でかなりダウントレンドとなっている様子がうかがえる「火山小視頻」ですが、こちらは新年に旅行記サイトMafengwoとの共同サービスが発表され、2019年もそれぞれの動向に要注目となりそうです。
TikTokユーザーの構成比(2018年3~5月)を見てみると、2017年よりも男女比の開きが徐々に縮まっていることがわかります。女性:男性の比率は、2017年には63:37だったものが2018年には59:41へと変化し、男性ユーザーの増加がうかがえます。また年齢別構成比では26歳以上の比率が高まり、2017年の32%から2018年は48%と変化しました。
▲2017年3-5月のユーザーの年齢・性別比と、2018年3-5月の比率の比較
居住地域では、三級都市以下の規模の小さな都市でのユーザーの増加が目立ちます。
▲都市別の構成比を2017年時点と2018年時点で比較したもの(左)、都市のレベルごとにユーザーが何倍に成長したか示したグラフ(右)。6級都市が最も成長している
▼中国における、都市の階級について冒頭で解説しています
中国華東地区、地方都市のリアル ~江西省南昌市から二級都市の様子を知る/2018年10月~
■TikTokのショートムービーにタオバオ、Tmallへのリンク機能が実装 一般ユーザーも利用可能に
中国版TikTokである「Douyin」(抖音)では、2018年3月からECサイト「タオバオ」との連携が始まっていました。3月の時点では、アパレルをメインに、メイクアップ化粧品、楽器、文具、デジタル用品、テーブルウェアや調理器具等さまざまなジャンルの商品がTikTokにおける広告を利用し、売上拡大に成功しています。
▲TikTokにおける、タオバオの販売商品の広告
続く6月より試験的に、TikTokユーザーのメインページにタオバオへのリンクを設定する「ショッピングカート機能」が導入されます。この期間では、リンク機能は100万以上のフォロワーを持つ「視頻達人」(視頻はビデオの意味)のステイタスを有するユーザーにのみ提供されていました。ショッピングカート機能の利用申請をし、設定を完了するとタオバオの商品がTikTok上で表示されるようになります。2018年12月までの半年間で、6万人以上のインフルエンサーにこの機能が実装されていました。
▲ショートムービーの視聴画面で、右上のカートボタンをタップすると、タオバオに遷移する
そして2018年12月、このショッピングカート機能が一般ユーザーにも開放されたとのニュースが公式に発表されました。フォロワー8,000以上の実名認証を完了したアカウントで、10件以上の動画の公開が完了している場合に利用申請ができるということでしたが、この手順を実際に確認したユーザーの動画では「条件:フォロワー3,000以上」の表示があり、条件は日々調整されているようです。
TikTokからリンクする先はタオバオまたはTmall(天猫)です。申請が受理されると、これらのECにリンクするメニューとして、個人のトップページや投稿したコンテンツの再生画面に「商品ウィンドウ」「ビデオショッピング」「ライブショッピング」のメニューが出現します。ここからECサービスに遷移し商品が購入できるようになっています。
▲12月に正式にスタートしたショッピングカート機能。赤く囲われた部分からタオバオまたはTmallの商品ページに遷移する
TikTokショッピングカートのテストリリース期間でもあったダブルイレブン(11月11日の大型セール)には、売上8,000万元(約13億2,000万円)、350万元(約5,775万円)、また口紅10万本の販売達成といった驚異的な記録を打ち立てたインフルエンサーも存在します。※1人民元=16.5円で換算
■まとめ ~TikTokは豊富な「いいね」を分析し、AIによるレコメンド精度を向上させ続ける~
Weiboの場合は、フォロワーの数が多くてもリアクションの少ない有名人やKOLのアカウントが存在する中、TikTokの場合はフォロワー数に比例して「いいね」数も増加するという特徴があります。このことから、TikTokはフォロワーのアクションが活発という傾向が見て取れます。TikTokはこうした豊富なユーザーのアクションをAIで分析し、ターゲットにより強くマッチさせたレコメンドを可能にすることで、滞在時間を伸ばしています。
地方ユーザーの増加もあり、今後はリアルなショッピングの機会が少ない地方ユーザーを原動力に、ますますTikTok内でのEC利用が広まっていくことも考えられます。昨年は「ライブコマース」の流行もとりざたされましたが、2019年は「ショートムービーコマース」という新しいECの手法が確立される可能性もあるでしょう。今年もTikTokから目が離せなさそうです。
参考: