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中国華東地区、地方都市のリアル ~江西省南昌市から二級都市の様子を知る/2018年10月~

中国人のニーズや消費者心理を理解するためには、その生活環境を知ることが有効です。中国といえば北京、上海、深センといった都市が浮かぶのではないでしょうか。最近であれば、杭州や重慶もそのイメージに加わっている方もいるでしょう。

中国には、人口でGDPが成長していながらも、それら大規模な都市の存在感に負けている「二級都市」「三級都市」が存在します。本編ではこういった「中国の地方都市」について、南昌市を例に実際の様子を紹介したいと思います。

■中国の都市の区分「○級都市」と、省別GDP、GDP成長率、人口増加率

中国は都市に規模等の指標でランクをつけています。北京、上海、深セン、広州の4都市を「一級都市」、続く重慶などの直轄市やアリババの本社のある杭州など15都市を「新一級都市」、続くレベルの都市を「二級都市」としています。その下にも「三級都市」「四級都市」「五級都市」が存在します。これらの区分はメディアグループの『第一財経』が指標を設定、定義しており、これに基づき各都市が分類されています。

「新一級都市」の15都市は成都(四川省)、杭州(浙江省)、重慶(直轄市)、西安(陝西省)、天津(直轄市)などです。二級都市は30都市存在し、その多くは省都です。昆明(雲南省)、大連(遼寧省)、合肥(安徽省)、福州(福建省)、ハルビン市(黒竜江省)などがここに分類されます。また三級都市には三亜(海南省)、桂林(貴州省)、汕頭(広東省)、吉林(吉林省)などがあり、四級都市は泰安(山東省)、開封(河南省)など、五級都市には景徳鎮(江西省)などがあります。

▲中国の各都市の区分

これらの分類を決める指標の一つにGDPがあります。2017年の省ごとのGDPを見てみると、新一級都市を多く持つ江蘇省が上位に入っていることがわかります。

出典:http://www.3news.cn/24hot/2018/0131/238122.html

ただし、省ごとの主要産業や、面積の規模が大きく違う直轄市(北京や上海)も同一の指標で図られるため、単純に比較することは難しいと言えます。

もう一つの指標としてその増加率を確認してみると、貴州省、チベット自治区、雲南省、重慶市、江西省がトップ5となっており、これらの地域が経済的に成長中であることがわかります。

また、この3年間の人口の増加率(2015年~2017年)では、河北省、江蘇省、広東省、新疆ウイグル自治区などが10%前後の成長率となっており、その他福建省(6.4%)や陝西省(6.0%)、湖北省(5.1%)、山東省(4.0%)などが続いています。

現在、インバウンド需要のターゲットとなる訪日中国人はいわゆる富裕層であり、その多くはここでいう一級都市や新一級都市から来ていることが仮説として考えられます。しかしこの先2年3年とたっていくうちに、現在「二級都市」「三級都市」と分類される都市からの観光客も増えていくことが予想されます。

中国で現在市場を拡大し続けているECでは、こういった地方都市の取り込みが今後の市場開拓の課題となっていますが、今年上場した「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」は彼らの需要に応えることに成功しています。「拼多多」は2015年9月にスタートしたECですが、グル―ポン的な共同購入による値下げが特徴で、創業4年目の現在ユーザーは4億人に達し、ECの王者タオバオの5億ユーザーと距離を縮めています。

▼2018年7月に上場した「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」とは? ユーザー層、今後の展望について解説しました(外部サイト『訪日ラボ』)

新興中国EC「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」のユーザー数が4億人となった理由とは/中国の2大EC「タオバオ」「京東ジンドン」との違いから探る

■二級都市の生活とは? 南昌市では「相乗り」が常識、ファッションさまざまに「娯楽」求める姿も

さて今回は2018年10月に訪問した二級都市、江西省の南昌市を紹介したいと思います。江西省は福建省の隣に位置し、上海等を含む中国の「華東」地域に位置します。

▲百度百科より。水色が江西省。西は湖南省、湖北省と接する。

気候は温暖で、湖や川など水源に恵まれています。人口は4622.1万人(2017年)で増加率はマイナスですが、前段で確認した省別のGDP成長率では第5位にランクインしています。

江西省には焼き物で有名な「景徳鎮」、省都の「南昌」など合計11の市が存在します。省都の南昌市には国際空港(南昌昌北国際空港)があり、航空工業や光電子、VRの産業基地となっています。

▲江西省の各市(百度百科より)

南昌市には「贛江」(ガンジャン)、「滕王閣」(トンワングー、とうおうかく)、「南昌蜂起記念館」といった歴史的観光名所だけでなく、「南昌の目」と呼ばれる観覧車といった観光スポットも存在します。

  • 交通事情は? 捕まえづらいタクシーは口頭で相談の「相乗り」でシェア

南昌市内にはこういった新産業の拠点が集まる「新区」があり、このあたりは上海や北京の中心地と比べると、やはり道を走る車も少なくなります。ただ、その周辺にも「ワンダーグループ」のショッピングセンターやホテルが点在し、また遊園地があり、車移動で楽しめる娯楽がある生活がうかがえます。

繁華街にはショッピングセンター、IMAXをうたう映画館もあります。

▲シネコンの入ったショッピングセンター。H&Mと自動車の広告が確認できる。

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筆者が外出した平日夜には雨が降っており、男女カップルや4~5名のグループがショッピングセンターの前でタクシーを待っていました。タクシーは中国版ウーバーのDidiを利用することもできるはずですが、供給がおいついていないのか、夜21時過ぎであっても車を待つ人の姿が消えることはありませんでした。また、1泊3,000円程度のホテルのフロントでタクシーの配車を頼むと、電話をかけタクシー会社の返答を待つ…といったやりとりが発生し、待ち時間も短くはありませんでした。

こうした状況で何度か見られたのが「相乗り」です。道端でタクシーを待っていると、「どこまで行くの」と聞かれ、方向が一緒であれば乗車できるというものです。金額は乗車時に確認します。技術革新により様々なシーンで消費スタイルが様変わりしていると伝えられる中国の生活ですが、今回筆者が南昌で体験したのはアナログで人情味あふれるタクシー乗車だったのでした。

  • ファッションへの関心は? 少数派でもこだわりのある層が確かにいる

筆者の滞在期間中には、第一回目の開催となる「世界VR産業大会」が南昌市の新区で開催されていました。ビジネス目的の来場者に加え、市内の親子連れが来場している様子が見られました。全市内的に広告が展開され認知が高かったという事情もありますが、遊園地やショッピングモールでは飽き足らず「新しいものを見たい」「刺激的な体験を味わってみたい」という好奇心が非常に強いのだと感じさせられました。

会場にはカップルと思しき二人連れや友人同士とみられるグループもいましたが、多くの人が北京や上海と比べてあか抜けない服装でした。その中で、銀座にいても違和感のないような、すきのないファッションに身を包む人も見られ、どの都市であっても自己表現のためのファッションを求める層は存在するのだと気づかされます。また、一流スポーツブランドのスニーカーを着用している人がちらほらといるのが印象的でした。

■まとめ ~中国の新たな需要をいち早く取り込むには、広い視野と最新情報へのキャッチアップが重要~

南昌市は、北京や上海または新一線都市と呼ばれる消費力の高い人々がいる地域と異なり、現在はまだインバウンドのターゲットには想定されない都市です。しかし変化のスピードの速い中国では、そう遠くはない将来に、南昌市や南昌市と同様の経済水準、生活環境と考えられる二級都市の人々が、海外旅行や越境ECの主要なユーザーとなってそれぞれのマーケットで存在感を高めてくることも十分あり得ます。今からこういった地域の情報をカバーすることで、いち早く市場の需要を取り込むことも、中国市場への展開の戦略として、一考の価値があるでしょう。

クロスシーは、今後も中国インターネットの最新事情にキャッチアップしながら、中国人目線のマーケティング施策で皆様をサポートして参ります。インバウンド需要の取り込みから越境ECの展開まで、日中間クロスボーダービジネスをお考えの際には、ぜひこちら(別ウィンドウで開きます)よりお声がけください。

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