ラッキンコーヒー「コーヒーのある生活」に見る「ゆとり」を求める 中国デリバリーコーヒー 苦難を乗り越えて上場へ 訪日ラボの弊社連載第31回が公開
インバウンドニュースサイト「訪日ラボ」でのクロスシー連載第31回目が公開されました。
今回は中国における 「コーヒー」 最新事情を紹介しました。嗜好品としてのコーヒー人気の高まりだけでなく、「ニューリテール」として人気を拡大した「瑞幸咖啡(luckin coffee、ラッキンコーヒー)」 のこれまでの動向を解説します。
■中国でのコーヒー文化の広まり
チェーンのコーヒーショップの代表ともいえるスターバックスコーヒーは、1998年に中国に進出し、今年ちょうど 20周年となります。
スターバックスコーヒーは北京、上海といった大都市にコーヒーを手で淹れて提供する形式の 「スターバックス リザーブ」を開店しており、2017年の夏の時点ですでに90店舗を超えました(日本には65店舗、4/8時点)。
さらに、今から2年前の2017年には、シアトルに続き世界で2店目となる「スターバックス リザーブ ロースタリー」を上海に出店します。この店舗は2019年現在、日本の東京店を含め世界で5店舗のみの展開です。
▲北京のスターバックスリザーブの店内。2階建てとなっている。
■ラッキンコーヒーの登場でコーヒーもデリバリーメニューに仲間入り
飲食店においては以前から利用されてきた「デリバリー」=中国語で「外売」(ワイマイ)のサービスですが、これをコーヒーショップに応用したのが銭治亜氏が創業した瑞幸咖啡(luckin coffee、ラッキンコーヒー)です。
2017年10月に創業したラッキンコーヒーは、デリバリーとアプリの力を利用し、わずか約1年という短い時間でスターバックスのライバルとして頭角を現しています。
ラッキンコーヒーは一昨年より中国で話題となっている「ニューリテール」の一つで、オンラインとオフラインを融合させ、商品(コーヒー)を販売しています。
具体的には、オンライン上のアプリでのみ注文を受け付け、消費者はオフラインの実店舗または配送で商品を受け取ります。これにより、店舗運営のコストを下げるという狙いもあります。
「焼銭」戦略で8億元超える純損失という結果も「想定の範囲内」
ラッキンコーヒーは2018年の年末に店舗数が2,000を超えました。2019年は2,500店舗の展開を目標としており、スターバックスコーヒーの3,300店舗を急激に追いあげています。
ラッキンコーヒーは創業から約1年後の2018年7月にAラウンド2億ドル(220億円)の資金調達を完了し企業価値は10億ドル(約1,100億円)に、続く同年12月にはBラウンド2億ドル(220億円)の資金調達も完了し企業価値も22億ドル(約2,420億円)となっています。
2018年9月までの9か月間の累計販売数は3,670万杯、売上は3.75億元(約62億円)です。
出店店舗数や販売数など順調に見える数字がある一方で、純損失は8.57億元(約141.4億円)です。
中国では珍しくない「焼銭」戦略は、企業側にほとんど利益が残らないような割引率や無料クーポン券をユーザーに多くばらまく施策を意味します。ラッキンコーヒーもこの戦略を採用し、コーヒーの割引や無料での提供を行っていました。これにより、2018年下半期までに1,200万人ものユーザー獲得に成功していますが、その影響で巨額の損失を抱えることになったとみられています。
ただし企業側は損失については「想定の範囲内」と述べ、資金調達の額を理由に心配はないと説明しています。
そして4月23日、ナスダック株式市場に上場申請をするに至っています。
■まとめ:現地トレンドから最新の消費者心理を読み解き、インバウンド市場へ応用を
都心部では残業や土曜出勤も多い現在の中国では、ゆとりあるライフスタイルやくつろぎの時間を大切にしている消費者も少なくありません。こうした需要とマッチするアイテムや存在は、コーヒーに限らずこれからも売上を伸ばしていくでしょう。
ニューリテールをはじめとした中国のIT企業が提供するサービスの技術的側面はもちろん注目のトピックです。ですが、その向こうに見えてくる消費者心理にも、訪日中国人に自社製品を訴求するためのヒントが多く隠れています。現地の最新情報にキャッチアップしていくことで、インバウンド市場での成功を手に入れることができるでしょう。
連載第31回はこちらからご覧いただけます。本文もぜひご一読ください。
中国最新トレンド「コーヒーのある生活」に見る「ゆとり」を求める中国人の姿〜デリバリーコーヒー「ラッキンコーヒー」の登場と苦戦
次回第32回目の訪日ラボ連載は、4月25日(木)に更新予定です。ぜひあわせてご確認ください。