小紅書/REDとは~中国越境ECマーケットで注目 SNS×EC、ユーザー投稿のコンテンツをタップして商品購入へ~
今年2019年、中国では例年5月1日のメーデーが祝日ですが、3月の政府発表により急遽4連休が制定されました。
有給休暇と組み合わせて海外旅行を検討する人も多く、各OTA(オンライントラベルエージェンシー)の発表によれば、昨年同様タイと日本が人気目的地となっており、最大手のCtripの発表によれば、日本に次ぐ人気目的地にベトナムがランクインしました。
中国人にとって、日本旅行の楽しみの一つが「買い物」です。滞在中の日本でのショッピングは当然、今や時間や場所の制約を受けない「越境EC」を利用して日本製品を購入する人も少なくありません。
本編では現在そして今後の越境ECの市場規模について、中でも注目の「小紅書」(RED、小红书、シャオホンシュ)について解説します。
■越境ECの市場規模
中国の研究機関iiMedia Researchでは、2016年から2018年の越境ECプラットフォームの市場規模、そして2019年と2020年の市場規模(予測)を以下のように発表しました。
2016年には6.3兆元(約103.95兆円)、2017年は7.6兆元(約125.4兆円)、2018年は9.1兆円(約150兆円)と成長をつづけ、今年2019年には10.8兆元(約178.2兆円)を超える見込みです。
また東京オリンピックが開催される2020年には12.7兆元(約209.55兆円)となります。
こうした日本はじめ海外からの製品の購入チャネルとなるのが「越境EC」です。
越境ECは海外製品を取り扱うECサイトやアプリを意味し、正規の出店・出品による販売からソーシャルバイヤーを通じた販売などその形態は多岐にわたります。
小紅書/REDの成り立ちとユーザー数、属性
ECアプリ「小紅書/RED」も、そうした海外製品を積極的に扱うECプラットフォームの一つです。
2013年にサービスを開始し、2018年には登録ユーザー数は1億を超え、月間アクティブユーザー数(MAU)は約3,000万となっています。
ユーザーの7割が女性です。年齢別では18-35歳が全体の約70%を占めていますが、18-23歳(95後、1995年以降生まれ)がボリュームゾーンです。
■ 小紅書/RED 充実のSNS機能
まずは小紅書/REDの基本構造です。
小紅書/REDには「ホーム」「ストア」「投稿(+)」「メッセージ」「マイページ」の5つのタブがあります。また左上の黄色い円形のアイコンからは、Instagramの「ストーリーズ」に似た機能が利用できます。
この機能は「打卡/hey」と呼ばれ、アップロードされた動画または静止画
は、ストーリーズより長い3日後に自動的に消去されます (ストーリーズは24時間で消去されます)。動画は最長で15秒、公開先は友人に限定または全体公開を選ぶことができます。
アプリを立ち上げると全面広告が表示されます。1度表示されると、その後数時間は広告が表示されません。ユーザーにとって快適な利用環境を考えサービス設計がされているのが感じられます。
ホーム
広告表示のあと「ホーム」が表示されます。「ホーム」の下には3つのメニューがあり、スライドかタップで選択できます。中央が「Explore」、左に「Follow」、右に「Nearby」があります。
「Explore」にはお薦めのコンテンツが、「Follow」はフォロー中のアカウントのコンテンツが、「Nearby」は位置情報に基づいたお薦めの投稿が表示されます。
▲位置情報に基づいてお薦めのコンテンツが表示される。
ここまで、アプリを起動してからECサービスの一番の目的である「ものを売る」という機能にはまったく触れられない構造になっています。
小紅書/REDは、ECとしてサービスを開始したアプリではありますが、実はSNS機能を主軸においたサービスにもなっているということがわかります。
このような特徴から中国では「コンテンツEC」とも呼ばれる小紅書/REDですが、ユーザーはどういった動線から商品を購入するのでしょうか。
ストア
続いてEC商品タブ(ストア)と商品購入画面の特徴を解説します。 ホームの隣の「ストア」メニューからEC機能が利用できます。
▲「ストア」タブのおすすめ商品。化粧品が目につく。
ストアには商品が並び、タップして表示させると、ほぼリアルタイムで購入情報が表示されます。人気商品ともなると、購入者の情報が次々と表示されます。売り場で陳列されている商品が手に取られ、在庫が減っていくかのような気持ちにもさせられます。
▲どの地域のユーザーが購入したかリアルタイムで流れる。
■コンテンツから商品へ
続いてコンテンツを詳細に見ていってみましょう。
小紅書/REDには「写真」 と、数分程度の「ショートムービー」がアップできます。スマホの中のデータからアップロードもできますし、その場で撮影したデータを利用することもできます。
コンテンツには位置情報とブランド名、ワンタップで店舗へ遷移
コンテンツにはスタンプやユーザーネーム、ハッシュタグやブランド名を載せることができます。ブランド名にはECの店舗がひもづけられており、コンテンツからワンタップで店舗に移動することができます。
また、コンテンツの写真とテキストの間に関連商品が複数表示されており、ここからも商品を購入できるようになっています。
動画にも店舗情報を追加できるようになり、写真でも動画でも、コンテンツを見ていて気になった関連商品があればそのまま購入まで完了できるSNS型ECサービスとなっています。
もちろん、商品情報や店舗情報が一切ない投稿もかなりの数見られ、中国人ユーザーの嫌がる「広告色の強さ」は感じられません。
検索時は関連ワードも提案、流行を追いたいユーザーに使いやすく
「ホーム」「ストア」には検索窓がついており、全体から検索するほかに、ハッシュタグや話題の投稿、最新の投稿、店舗、ユーザーといったカテゴリ別の検索も可能になっています。
関連するキーワードのサジェスチョンも表示されるため、関心領域の流行を検索するのにも便利です。
▲「日本コスメ」での全体検索の結果。「ドラッグストア」「日本コスメマストバイ」「フェイスパック」「化粧水乳液」といった関連ワードが提案されている。
■まとめ~SNS的側面、コミュニティへの帰属意識が今後のECにおけるキーワード~
越境EC業界において、小紅書/REDはアリババや京東(ジンドン)と比べればまだまだ存在感は大きくないように見えるかもしれません。
しかしながら、小紅書/REDはサービス開始から5年という月日をかけて、その他のECプラットフォームにはない「スマホオンリー」「SNS機能重視」の戦略で、ユーザーの獲得とコンバージョンを向上させてきました。またスタイリッシュなUI(ユーザーインターフェース)で、95後の中所得層以上の女性への訴求に成功しています。
中国人は「広告色の強さ」には日本人以上に強い抵抗感を抱きがちです。SNSコンテンツではこうした押しつけがましさのない情報が発信されています。ECサービスであると同時に、SNSの要素も同様に重視されており、そもそもECで販売する商品とは関係のないコンテンツも多数投稿されています。
小紅書/REDはこうしたコンテンツを通じて、それを閲覧するユーザーの関心の高まるタイミングを逃すことなく商品の購入ページへの移動を促すことができるECサービスとも言えます。ユーザーは購入への心理的障壁も低くなり、結果として販売数の拡大につながると考えられます。
また小紅書/REDではユーザーを「小紅薯」(シャオホンシュ、「おいもちゃん」の意味)と呼び、コミュニティとしてのプラットフォームとのつながりを強めています。 「小紅薯」の持つかわいらしい語感は、ユーザーが自分に投影するイメージや理想とするそれとも近く、小紅書/REDはこうした部分でもユーザーの忠誠度を高めることに成功しています。
中国でも90後、00後の若者を中心に価値観の多様化が進んでいます。こうした中で、共通の関心を持つ細分化されたコミュニティーが活発な口コミの醸成や商品購入を促進する重要なファクターとなってきています。今後は中国社会でも価値観の多様化が進んでいくと予想されています。
小紅書/REDがユーザーにもたらす帰属意識および密度の高いつながりこそ、今後の中国におけるSNSマーケティングにおいても重要視されていくでしょう。
参照:
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1628216598844568001