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元祖ワンホンpapi醤が率いる最強のKOL集団papitube 中国でも広まる「MCN=マルチチャンネルネットワーク」の波

インターネット上のコンテンツプラットフォームの増加や、そこにおけるインフルエンサーの人気の拡大により、MCN(マルチチャンネルネットワーク)が中国でも存在感を高めています。MCNとは、YouTubeなど動画配信サービスが台頭し始めた2000年代に登場した概念です。SNSや動画配信プラットフォームにおいてコンテンツを投稿するユーザーに対し、コンテンツ制作や配信、著作権の管理をサポートする組織を意味します。

2015年からネットにオリジナルの動画を公開しているpapiちゃん(中文:papi酱、酱はジャンの音で「ちゃん」を表す)はワンホンの草分け的存在です。現在papitubeというMCNを運営しています。本編では前半でワンホンとしてのpapiちゃんについて、後半で中国でのMCNの現状とpapitubeについて解説します。

※ワンホン…中国語でネットの有名人の意味で、インフルエンサーを意味する。

■Weiboのフォロワー数は2871万! 2億円超の融資を受け、WWFの広報大使も務めた「papi酱」とは

papiちゃんは、上海出身の87年生まれ、本名を姜逸磊(JIANG Yilei)といいます。2016年に中央戯劇学院の大学院を卒業しています。在学中の2015年に、ネット上でオリジナルのムービーの公開を開始し、2016年の2月にネット上にアップした「男性生存の法則」をきっかけにブレイクします。この作品で多くの視聴者を獲得しただけでなく、その商業化の可能性をいち早く見いだされたpapiちゃんは、この年1200万元(現在のレートで約2億400万元)の融資を受けます。

ブレイクのきっかけとなった「男性生存の法則」は、papiちゃん自身が複数の髪型、衣装で登場します。シンプルな構図と、まくしたてるような口調が印象的です。

▲動画、男性生存の法則のキャプチャ

この動画は現在も動画配信サイトである「iQiyi」や「ビリビリ」で視聴可能です。彼女の語り口に圧倒されているうちに、なんだか正しいことを言われているような気分にまでなってくる、そんな面白さが存在しています。

papiちゃんの動画は彼女の同年代の関心を集め、中には視聴回数で数億回を記録するものも見られます。papiちゃんのWeiboは現在2871万フォロワー、バイドゥ傘下の動画配信サイトiQiyiでは78.5万人のチャンネル登録があります(2018年9月24日現在)

▲papiちゃんのiQiyiトップページ

papiちゃんは、大学院の卒業翌年にあたる2017年にWWFの中国における広報大使の任命を受けており、世界的にもその影響力の大きさを認められていることがわかります。

理不尽なようで実は筋が通っている? 中国で人気の「搞笑」コンテンツ

中国のUGC/PUGC/PGCにおいては、彼女の作品のような、とるにたらないような話題をシリアスな口調で掘り下げる作品を「搞笑」というカテゴリとして扱います。現在も人々に支持されているカテゴリとなっており、90後(90年代生まれ)のKOL「办公室小野」も、このカテゴリで人気を集める一人です。「办公室小野」の動画作品は、会社のデスクで料理をするというハチャメチャな設定で、その一方完成する料理のクオリティの高さでファンをつかんでいます。一見不条理なことをしているようで、同時にどこかに真理を持つストーリーが人気の秘訣と言えそうです。

※UGC(User Generated Content)=ユーザーによりつくられたコンテンツ

※PUGC(Professional User Generated Content)=完成度の高さや構成で大衆の目を引くコンテンツありながら(Professional)、その投稿者のキャラクターは一般人程度の特徴に抑えられており(User)、結果として視聴者から親近感が抱かれやすいという特徴がある。

■クリエイターの質の高さと完璧な布陣を備えたpapitube

2016年以降、中国のコンテンツマーケティングでは「PGC(※)の制作」がプロモーションを成功させるための合言葉でした。これに変化が見られたのが2017年、昨年の秋ごろです。徐々にPGCといった言葉が聞かれなくなり、代わりに「契約クリエイターの多いMCN」が広告主に対して重要な地位を占めるようになりました。

※PGC(Professionaly Generated Contents)=映像の専門家が参与し完成したコンテンツ

今日の中国では、個人や一組織によるSNSや動画配信サイトのアカウント運営では、世間に存在感を打ち出すことはほぼ不可能となっています。運よく存在感を打ち出したとしても、コンテンツ発信を継続的に収益化するのは難しいと言えるでしょう。非常にたくさんのSNSプラットフォーム、動画配信プラットフォームが存在し、また収益化の手段も多様になってきているからです。

papiちゃん(姜逸磊)は、こういった流れにも一足早くキャッチアップしていました。2016年、共同事業運営者の楊銘氏とともにMCNプラットフォーム「papitube」を立ち上げます。papitubeは、中国版TwitterであるWeiboはじめ、bilibili動画やショートムービーのプラットフォームなど複数のサービスで活動するインフルエンサー(ワンホン、KOL)をマネジメントしています。

▲papitubeのロゴ

MCNの実力を左右するのはクリエイターの質とその布陣です。中には単なるPGC制作者の寄せ集めとなっているケースもあるといいます。その点、papitube傘下のクリエイターは、ワンホンの中のワンホンであり、コンテンツ制作で中国一ともいえるpapiちゃんの眼鏡にかなったクリエイターがそのメンバーに選ばれています。その実力は推して知るべしでしょう。加えてpapitubeは、所属クリエイターのそれぞれが得意とする内容が非常に広範にわたっています。そのため、現在中国で最も実力のあるMCNの一つとなっています。

2018年4月で設立2周年を迎えたpapitubeですが、ディレクターを務めるpapiちゃんは今後は100名までクリエイターを増加させることを表明しています。今年6月の時点では約60名のクリエイターと契約しているそうで、今後も着実にその数を伸ばし影響力を増していくことが予想されます。

■まとめ ~コンテンツやプラットフォームは成熟期、次の勝負の場はMCNに~

ワンホンとなったpapiちゃんが初めて引き受けた広告は2200万元(3億7000万円)の値がつきました。それから3年が経った今も、papiちゃん自身の魅力は衰えるところを知りません。前半で紹介した彼女のSNSアカウントのフォロワー数や動画配信チャンネルの登録数が示すように、その影響力はまだまだ非常に大きいのです。bilibiliでは200万回、300万回の再生回数を記録することは珍しくなく、合計再生回数は2.4億回を超えており、なによりもそのクリックレートは依然として高くなっています。

成長速度の速い中国では、コンテンツの制作やプラットフォームの整備では成熟期を迎えつつあります。そのような中、この先大きな発展の余地があるのがMCNでしょう。ワンホンとして成功を収めているpapiちゃんは、この時勢をいち早く読みpapitubeの運営に着手しています。papitube所属のクリエイターの今後の動向は、中国のコンテンツマーケティングの先端を理解するための大きなヒントになるでしょう。

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