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「百度/Baidu」はAI自動運転を開始、アプリで変わる中国ネットユーザーの検索エンジン活用法

日本ではインターネット上の情報を検索するとき、GoogleやYahoo!の検索エンジンを利用するのが一般的です。

中国でも、検索エンジンが使われています。ご存知「百度/Baidu」(バイドゥ)です。

2001年からこの検索エンジンを中国国内で展開している百度は、首都北京の中関村に本社を構えるIT企業です。中関村はかつて秋葉原のような電子製品街でした。 中国最大のIT企業であるレノボを始め、様々なIT産業や研究所が集まっています。中国で人気のショートムービーアプリDouyinを運営するバイトダンスもこの地域に本社を構えています。

海外には現在、日本、アメリカ、ブラジル、タイ、 インドネシア、インド、エジプトに事務所を展開しています。

■百度(バイドゥ)の時価総額とサービス

百度(バイドゥ)は、中国の3大IT企業「BAT」の「B」にあたる企業です。2001年から中国国内にサービスを提供し、2005年にはアメリカのナスダック株式市場に上場しました。

現在、3社のうちテンセント(T)と アリババ(A)は、時価総額世界ランキングトップ10に入っており、2019年はテンセントが4,027億ドル(約44兆円)、アリババが3,839億ドル(約42.2兆円)です。

これに対し、百度(バイドゥ)は381.13億ドル(約42兆円、2019年6月7日調べ)で、2社との差は大きく開いています。こう言ってしまうと、百度は企業としてそんなに存在感がないのではと感じてしまうかもしれませんが、この時価総額は、日本企業の花王の時価総額、約41.12兆円と並ぶものです( 同日時点、日本経済新聞より )。企業としての百度の地位が、現在でもみじんも揺らがないものであることは理解できるでしょう。

百度の董事長兼CEOの李彦宏(LI YANHONG)はロビン・リーの名で世界に知られた経営者です。

社名、サービス名である「百度」は中国の南宋時代の詩「 众里寻他千百度。(衆里尋他千百度)」より名づけられています。この詩は、詠み人の理想への執着を描写したものです。この詩における「百度」には、思いつく限りの場所という意味があり、 検索エンジンがその機能で情報を探し出す場である、広大なインターネット空間とそのイメージが重なります。

百度のサービスにはどんなものがある?

百度は、世界トップシェアの検索エンジンGoogleと同じく、地図やニュース、画像、動画検索といった目的別の検索や翻訳のサービスも展開しています。中国の携帯番号を用いてユーザー登録をすれば、それまでの検索履歴に基づいたおすすめのニュースが表示されるようになります。

百度は地図やニュース以外にも様々なサービスと提携、提供しており、その数はGoogleの比ではありません。

BBS(掲示板)のBiadu Tieba(百度貼吧/バイドゥティエバ)は最近ユーザー数を伸ばすなど、経済成長による人々の思考方法やライフスタイルの変化が引き起こす、インターネットサービスの需要の変化にもうまくキャッチアップしています。

また百度のアカウントからコンテンツが公開できる「百家号」や、Q&Aのサイト「百度知道」、モバイル電子決済の「百度銭包」(バイドゥウォレット)、中国版Wikipedia「百度百科」、その他ゲーム、統計、クラウド、広告管理システムなど、数十に及ぶサービスを提供しています。

■中国の検索エンジン市場は?

このようにあまたのサービスを展開してはいるものの、百度のサービスの柱は「検索エンジン」です。

中国の検索エンジン市場のマーケットシェアをPC、モバイル別に見てみましょう。少し前ですが2018年3月のデータから紹介します。中国では検索エンジンのシェアに関するさまざまな統計が発表されていますが、基本的には百度が70%以上のシェアを獲得しており、続いて360、神馬(shenma)、捜狗捜索などが利用されています。

▲2018年3月のPCユーザーにおける検索エンジンの利用シェア

▲2018年3月のモバイルユーザーにおける検索エンジンの利用シェア

検索エンジン全体の利用率については、2012年からの変遷が以下のようにまとめられています。

▲2012年~2018年上半期までの検索エンジン利用者数と利用率

2012年から2018年の上半期にかけて、PCにおける検索サービスのユーザー数は4.5億人から6.57億人へと、一貫して増加しています。

中国の現在のインターネットユーザー数は約8億人で、こちらも一貫して増えていますが、増加率は以前より落ち着いており、今後様々なインターネットサービスの利用者数に急速な拡大が見られるかどうかは定かではありません。

続いて利用率を見てみます。2012年に80%だった利用率は、インターネットユーザーが増加してもほぼ変わらず、2017年には82.8%まで伸びましたが。その後2018年の上半期は81.9%と微減しています。

またモバイルユーザーにおける利用者数や利用率も2016年以降はPCユーザーとほぼ同じような数字となっています。

検索エンジンは利用率に低下がみられるものの、昨年上半期にまだ80%ものユーザーが利用しています。様々なインターネットサービスが展開されている中国において、それでもなお検索エンジンに対する需要があることがうかがえます。

現在はWeChatやWeiboやDouyin(抖音/ドウイン)といったSNS、また旅行時にはMafengwo(马蜂窝/馬蜂窩/マーフォンウォ)といった旅行記サイトを利用しながら、変わらず検索エンジンが利用されているということがわかります。

中国における検索エンジンといえばほとんど百度を指すに等しくなっています。つまり、百度のサービスは、ショートムービーや目的別のインターネットサービスが発達した2019年にあっても、同様に支持されていると考えられるでしょう。

■上場以来初の赤字決算、検索以外の収益構造の樹立を目指す百度

百度は「BAT」という呼称にも表れているように、中国を代表する企業の一つです。

ところが、今年の第1四半期の決算報告で、2005年の上場以来の初の赤字決算となりました。 第1四半期の売上は、前年同期比15%増の241億元(約3,835億円)だったものの、3億2,700万元(約52億円)の純損失です。

この決算報告の際、上場時から同社に14年間勤務し、実質ナンバー2であった
向海竜(Xiang Hailong)上級副総裁の退職が発表されました。向氏が総裁を務めていたのはまさに百度の検索事業で、向氏の退職はこの事業がもはや百度の主要事業とはなりえないことを意味すると報道では伝えられています。

先に見てきたデータの通り、ネットユーザーはこれからもインターネット上で検索自体は続けるでしょう。同時に、SNSやショートムービー等コンテンツ共有のプラットフォーム、あるいはECプラットフォームの利用も増えています。

民間企業が提供するサービスの存続という面では、利用者数だけでなくマネタイズが重要となってきます。検索エンジンは、こうした新たなサービスを展開するプラットフォームの台頭や、ユーザーの行動様式の変化や多様化に対面し、さしあたっては収益化をはかれないサービスモデルとなったと考えられます。

AI技術を軸にした「自動運転」で再びリーディングカンパニーの地位に

検索エンジンを運営している百度では、先にみたように様々なインターネットサービスを提供しています。翻訳サービスの百度翻訳の精度はGoogle翻訳をしのぐ面もあるなど、技術力の高さがうかがえます。

AI技術を利用した四輪自動車の自動運転を行うプラットフォーム「アポロ」の商業化を進めており、 昨年には中国各地で実証実験を行っていることが中国メディアにより伝えられてきています。

北京市だけですでに45台の試験車両を市場に投入しており、自動運転技術では業界のトップを走っています。北京市での実証実験においては、NIOや北京小馬といった業界の著名企業がこれに追従していますが、試験車両の台数や試験走行の総距離でも大きく差をつけています。

▲北京市における自動運転の試験車両の台数(左は総数、中央は現在も稼働中の台数)と試験走行の総距離。  出典: 中国新闻网

▲アポロの無人運転タクシー 出典: 中国新闻网

■まとめ~アプリ優位のインターネット空間で、異なるサービスを横断するIP~

中国の検索エンジン市場では変わらず優位な立場にある百度(Baidu/バイドゥ)ですが、インターネットユーザーの検索需要の変化や利用するサービスの多様化により、収益を得ることが難しくなってきているようです。

中国ではモバイル端末(スマホなど)を通じたインターネット利用率が非常に高く、インターネットユーザー98%に達します。

こうした端末からはアプリを通じてサービスを利用するのが一般的で、ユーザーは情報を検索するにもそのアプリの中で行動を完結し、百度の検索エンジンを必ずしも必要としなくなっています。

最近は日本でも、インターネットを通じた情報収集は必ずしもGoogleやYahoo!で行われているわけではなく、探し出したい情報の領域に合わせてTwitterやInstagramといったサービスにダイレクトにアクセスするようになってきています。同様に中国でも、有名人の情報はWeibo、ファッションや出かける先を検索するのにECアプリのRED(小紅書)、旅行先の情報はMafengwo(馬蜂窩)といったようにサービスの使い分けが起きています。

▼「小紅書/RED」 については、以下のエントリーで詳細に解説しています(クロスシー公式ブログ)

中国越境ECマーケットで注目の「小紅書/RED」とは~SNS×EC、ユーザー投稿のコンテンツをタップして商品購入へ~

こうしてアプリで利用するサービスを横断的に検索する方法はまだ確立されていません。インターネットユーザーに情報を通じて影響を与えるという観点から言えば、異なるプラットフォームに同一のIDを展開するインフルエンサーの重要性が上がっているといえるでしょう。

消費者の生成するコンテンツ(UGC)を公開する複数のプラットフォームで活動する著名なIDをIP(知的財産)と呼ぶことがあります。IPは、こうしたプラットフォームにおけるコンテンツの表現方法や配信について専門的な知見を共有する組織であるMCNによってマネジメントされているのが特徴です。

▼MCNについては、以下のエントリーで詳細に解説しています(クロスシー公式ブログ)

中国でも広まる「MCN=マルチチャンネルネットワーク」の波、元祖ワンホンのpapi醤が率いる最強のKOL集団papitube

百度は検索エンジンによる収益だけでなく、見てきたようなAIを主軸においた自動運転事業で今後の立て直しを図ると見られています。BATと呼ばれる中国のトップ企業が転換を迫られるほど、中国の情報空間は大きな変化の時を迎えているといえるでしょう。

当社では、今後も日中間の情報格差を埋めるべく、最新の中国インターネットマーケティングに関する情報発信、セミナー等を積極的に行ってまいります。セミナーの講師ご依頼や詳しいサービスのお問い合わせは、ぜひこちら(別ウィンドウで開きます)よりお声がけください

参考:

https://www.jianshu.com/p/3a93dc40a90b

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1633749371796016705

https://www.afpbb.com/articles/-/3226088

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO03917890S6A620C1I00000/

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